2016年2月24日水曜日

口太鼓のことなど

最近読んだ森田真生という人の『数学する身体』という本がなかなか面白かったです。

後半のチューリングの話(1948年にニューラルネットワークによる機械学習みたいな構想に言及してたとか恐ろしい逸話がたくさん)、岡潔の話もなかなかですが、前半駆け足で語られる近代以前の数学史のところが非常に面白かったです。
体を使った数の数え方、10進法の非効率と必然性、数字のできるまで、物理世界と直観から離れた数学世界の形成にどれほどの長いプロセスがあったか...

いま日頃当たり前に使う記号や道具、メディアがなかったとき、人の認識のあり方がどれほど異なるものになるかについて想像させられる本が好きです。
そういう想像にはいくつかの経路があると思います。歴史をたどること、異文化をまなぶこと、子供を観察すること、動物を観察することなどなど。言語学とかもそうですね。
小説以外の本を読むときは、ガッツがある限りはそういう本を読むことにしてます。
そういう本って、たくさんあると思いますが、マクルーハンとか、レヴィ・ストロースとか、白川静とか、そういう人たちの本です。歴史書とか。
(で、ガッツがないときはとりあえずニュース雑誌とか時事評論とかゴルゴ13とかを読みます。さらにガッツのないときはFacebookやネットのニュースを見てますね...ほとんどのときはまったくガッツがありません...)

『数学する身体』の話に戻ると、音読しかなかった時代の話(色々なところで言われることですが)とか、体や物を使った計算のこととか出てきます。

物を使って数を数えるというと、小学生の頃に読んだ『漫画人物日本の歴史』の空海の巻を思い出します。空海が岩穴に籠ってお経を唱えてると大日如来が見えるんですけど、そういうときは数珠をたぐってお経の回数を数えてるんですよね。
たしか上のケタを数えられる(?)特別なタマも付いてるんでしたっけ?あの色の違うやつがそうかな?

数珠を使ってる数を数えてると、それは身体的行為なのは誰にも見えるしもちろん自覚もできるんですが、そもそも人が純粋に「頭の中だけで」やっていることって、どのくらいあるものでしょうか?
正確にこういう表現ではないですが、『数学する身体』にはこういう問いかけを誘う箇所がたくさんあります。

話飛びます...

太鼓のメロディーはしばしば「口太鼓」で唱えられます。
口太鼓で伝えられ、口太鼓で思い出し、口太鼓と共に、というより口太鼓「で」叩くので、叩いているときはけっこうみんな口が動きます。
ギニアの人から、わざと口を動かさないというコツも聞いたことがありますが、そんなことまで考えるくらい、放っておけば口は動きます。

えーと、ここからが今回書きたかったことなんですけど。

言えないものは叩けない(めちゃくちゃに叩けても、2度同じフレーズが叩けることはないと思います)し、他人の速いフレーズも、言えないものは聴き取れません。
そして基本的には言ってるそのままの感じの音色が出ます。が、これはなかなか分かりにくいです。
上手い人の口太鼓とその人の太鼓の音は、音としては必ずしも「似てない」からです。
「トン・トン・トン・トン・パン・パン・パン・パン!」という冴え渡る音色を出す人が、これを「ジギジギジャガジャガ」とか言ったりします。
「?!!」
でも実はその人の体は「そのように」太鼓を鳴らしてます。

その人にとってベストな口太鼓の「言い方」は、主に2つのロジックからかなり必然的に決まっていると思います。

1つは、速く言えることです。
上手い人が誰も「トトパパトトパパ」などと言わず、たとえば「ビディパタビディパタ」とか「ピリパラピリパラ」とか言ったりするのはそのためです。
これはダブルタンギングと全く同じ発想です。
ちなみに、単純に速く言えるということの他に、数珠と同じく触知的な数えやすさもメリットになるのかなと思います。触れるからこれとこれが区別できて数えれる、ということです。
ダブルタンギングができてはじめて舌は2を触れるようになります。

とりあえず、言えないものは叩けないし、言えないと聴き取れないので、初心者の人でここでつまずいてる人は多いなーと思います。
まずは先生の真似すればいいだけなんですけどね。

もう1つは、発音するのになるべく口周りの緊張が必要ない音がいいということです。
舌とか喉とか。口の中とか。の筋肉。
意識してみるとすぐわかりますが、「ト」とか「パ」とか言うのはかなり筋肉使います。
口太鼓が緊張を伴うものだと、その緊張は太鼓を叩くたびに自動的に呼び起こされてしまって、口周りが緊張し、首やら腕やら手やら色んなところも一緒に緊張します。

なのでだいたいは、それをなるべく減らそうとします。
口太鼓は、その人が影響を受けた先人の口太鼓を取り入れながら、その人の体が一番いい状態で太鼓を鳴らせる「言い方」にまで自然に練磨されていくのだと思います。
口太鼓にはその人の身の入れ方・脱力の仕方が畳み込まれてるといってもいいんじゃないでしょうか。
言ってる音がそのまま出る、と書いたのはそういうことです。

ていうか、叩かなくても、言わなくても、イメージするだけで口や喉の筋肉はわずかに緊張しますよね。太鼓のメロディを純粋に意識の上だけでイメージすることは難しいです。
高橋悠治さんの本にも何やらそういったことが書いてあった気がします。
古代インドでは心は喉にあると考えられていた...だっけ?そんなことも。

素手で(広義の)トーキングドラムを叩いていると、じっさい喉に心があるような気持ちもするし、手が喋るような気持ちもします。

これがやめられない理由かなー。

2016年1月9日土曜日

2016年もよろしくお願いします!

いま鹿児島空港で東京行きの待ち時間です。

第二子誕生に伴い、ここのところ2ヶ月ほど音楽活動のペースを落としていましたが、そろそろエンジンを戻そうかなというところです。

楽器に触れる時間・環境が確保しづらい時期というのは、まあいいことはあんまりないんですが、楽器を使わない練習、音を出さないでもできる訓練などなど、なんとかして工夫しようとするので発見は多いような気もします。
(もしや発見などせず演奏しまくるほうがいいのではないかという話もありますが...)

本番がない期間は、いったんフォームを変えてしまうような余裕もあるので、太鼓の鳴らし方をいろいろ試してみることもできたり。

後半ぜんぜんブログ書いてなかったですが、2015年はとても充実した年でした。


バンド活動はいろいろやってますが、特にSepteto Bunga TropisとJAZZ KLAXONの2本柱は継続的にライブを続けて行けていて、いい感じです。



ダンスのために叩くことも、アフリカンダンスのクラスやボンバのセッションを通じて続けられています。


ずいぶん遅いペースですが西アフリカのリズムを学び続けて、ジャズやラテンの真似事をしてみて、ボンバのリズムに触れて、ハイチのドラムを少し習ってみたりして...
リズムの骨組みが、やっとおぼろげに見えてきたような気もします。
(大きな意味でのクラーベというものなんだと思いますが...)

でも大事なところは、共通原理のところだけじゃなくそれぞれの違いにあったりもするので、とにかくやってみるしかないなという感じです。

それから、夏から始めたリズムワークショップは、思いがけずたくさんの方に参加いただいて、いい調子でやらせてもらってます。
人と人の間で起こることについて、知らないことがまだまだありますね...
これも今年の楽しみです。


そんなこんなで、2016年もよろしくお願いします!

2015年7月7日火曜日

リズムワークショップ

このウェブサイトにも少し前から掲載してますが、リズムワークショップというものを始めました。
パーカッションのレッスンではなく、ドラムサークルでもなく、リズムトレーニングというようなものでもなく、微妙...いや絶妙な内容のワークショップになっております。

告知的な説明はこちらのページに載せてます。

第一回は10名ほどの方に参加いただきました。
ほとんどの方が打楽器未経験でしたが非常に盛り上がり、
「あと2時間はいける」
「頭がグルグルになった」
「大音響の中でもα波全開」
などの感想をいただきました。
これだけ見ると、若干カルト的な要素があるんじゃないか?という気もする...たぶん大丈夫です(笑)。

内容は誰でも楽しめるように考えましたが、テーマとしては、これまでの自分の演奏体験の中で大事だと思ったことをたくさん盛り込んでます。

書きたいようにバーッと書いてしまうと、ざっとこんな事柄です。
・インターロッキング(噛み合わせ)や対話形式(コール&レスポンスなど)に代表される共同主観的なリズム形成と、分担の難しさ/面白さ(ひとのことも意識しつつ、ちゃんと自分の持ち場を守ること)
・と、その基盤となるパルスのソリッドさ(タテ線が合うこと)と柔軟さ(誰もコケないようにすること)の感得
・クラーベに代表されるリズム上の地形の導入と、その上での遊び方
・最終的に頭がグルグルになること

「頭がグルグル」については、そもそも集団で大きな音を出してループするので、わりと簡単にトランスにはなると思うんですけど、ユニゾン的な、もっと言えば全体主義的なトランスにはならないようにというところをすごく大事に考えてます。
違うパターンが噛み合わさってひとつのリズムになるのは、アフロリズムのひとつ大きな特徴かと思います。そこらへんに鍵があるかなと思ってます。

と、ごちゃごちゃ書いてしまいましたが、次回のリズムワークショップは7月28日(火)19:15から新高円寺South Sound Studioです。
グルグルになりたい方のご参加、お待ちしています!

2015年4月8日水曜日

ストロークの速さ

ストロークの速さ。以前からけっこう気になることが多かったんですが、最近また気になり始めました。
打楽器ではこれがけっこう大事な気がしてます。

1)ストロークの速さと音色
まず、速い方が強い音、まとまった音が出るんですよね。
キレイな音が出るとまでは言いませんが音が立ちやすいです。
音の粒が立つというか。そうするとグルーヴもしやすいし。
下手くそな頃は、とりあえずどんな音楽でも手はフルスイングして、「なんでうまくいかないかなー」と思ってた記憶があります(迷惑)。

この場合「ストロークの速さ」は、打面に当たるときの手やスティックの速度ですね。
(素手だけじゃなくてスティックでもかなり影響あると感じます。)

2)ストロークの速さとタイム
自分より圧倒的に上手い人と並んで叩いてて、特に二人きりの時、何をやっても自分が遅れてるように感じることがあります。
最近はあんまりないですが、以前はよくありました。
相手がどんどん速くなってるわけではないし、自分もどんどん遅くなってるわけではないのに、自分が常にちょっとずつ遅れてるような。
この現象、メカニズムは不明ですが、分かる人には「分かる!あるある!」って感じじゃないですかね?
はたから見てるとさらによく分かったりします。

そういう時の録音を聴いて、同じ人とやるときに、意識してちょっと「前め」のタイムで叩いたりして無理やり調整したこともありました。
こういうことをやると、叩いてる時に、自分でも前のめり過ぎて不安になったりします。
調整後のプレイをまた録音で聴いてみると、直さないときよりはだいぶいいんですけど。

一緒に演奏してる相手は(何か異常に盛り上がってるケースもありますが...)別に前のめりに叩いてるわけではないでしょうね。
どうも上手い人ほど、手やスティックを振ろうしてから音が出る(手が打面に着く)までにかかる時間が短いんじゃないかなと思います。自分も年々短くはなってきてる...気がする。
逆にこの時間が長いほど、出したい音を先に先に予定して叩かないといけなくなります(=前のめり)。

ということでこの「ストロークの速さ」は、手やスティックの初動と振りの速さですね。
想像してみれば分かる通り、振りはそんなに速くならないと思うので、初動が早い(時間がかからない)んでしょう。

なのでここでストローク速いって言ってるのは、
A) (当たる時の)速度が速い
B) 振ろうとしてから音が出るまでが早い
の2つの話みたいです。

B)は即興演奏にもとても重要な能力だと思います。

3)ストロークの速さと即興
手やスティックを振ろうとしてから早く音が出せると、出したいときにすぐ音が出せます。
すなわちより即興的なプレイが上手になる傾向があるようです。
ジャズのプレイヤーが「反応速いよねー」とか言うのは、脳も多少速くはなってるんでしょうが、この話だと思います。
打楽器で言うと、ジャズドラマーはものすごい速いです...

あ、あと、やっぱり止めるスキル、とかもありますね。
これも難しいですね。



余談)手の高さ
ハンドパーカッションの名人で、たまにめちゃくちゃ手が低い人いますけど、振る距離が短くなる=B)の速さが確保しやすい(ギリギリでも間に合いやすい)ので理にかなってますね!
...というだけでは済まなくて、普通の人がやるとA)の速さ(当たる時の速度)が確保できなくなり、強い音や粒の立った音を出すのはめっちゃ難しいです。ガッカリ。

逆に、名人ですごく手が高い人もいますね。
基本、高いとカッコいいですよね。
僕も気持ちの高まりは手の高さで表現するようにしてます!
(それでいいのかどうかは知りません。)
高く上げれるためには、遠くからでも、いつ振り始めたらいつ着くかが分かってないといけないので、経験が必要です。
打面からほど近い低空域で手をパタパタやる経験は誰でも積んでいるのですが、高いところになるほど経験が乏しくなって、座標も把握できなくなったりするように思います。
僕はこれを「制空圏が低い」と言っています(滅多に言う機会がないですが)。
まあ自分もあんまり高くないです。

ということで最後は、手が低いのも高いのもどっちもすごい!という話でした。

2015年1月13日火曜日

予定なし

今年最初のライブが終わりました。
Yalaqwe+レオナ@吉祥寺 Foxhole、観に来てくださった皆様ありがとうございました。
とても真剣に観てくれるお客さんばかりで、お店の雰囲気と相まって、非常に妖しい空気になりました。
演奏しやすかったです。
お客さんには好評だったみたいで何よりです。
ゲストで入ってくれたレオナのタップも、強烈な印象を残したようで。

こんなセットリストでした。

[ 1st set ]
Rum and Coca Cola
Mahjong
Afro Blue
Billie's Bounce

[ 2nd set ]
African Flower
Sweetie Pie
Underneath the Mango Tree

カリプソで始めてカリプソで終わってみました。
合間にソロやデュオを挟んだり、やたらと曲の解説をしたりしていたので曲数が少なくなってしまいました。

バンドの演奏動画は今回は公開する予定はないんですが、自分のソロのところだけYoutubeにアップしたので貼っておきます。
Afro Blueの前奏(?)の一部でした。
別にひとりでやらなくてもいいんだけど、せっかく自分のバンドでやるんだし誰も文句も言わないだろうからちょっと発表の機会を設けさせてもらおうという考えでやっています。


ところで、今年最初のライブが終わって、なぜかライブの予定が全くありません。
こんなことは近年記憶になくて、新鮮な気分です。
ちょっと自分のために演奏してみようと思います。

2015年1月4日日曜日

2015 1/9 Yalaqwe + レオナ@吉祥寺Foxhole

2015年になりましたね。

子供の頃、正月はずいぶん特別なものでした。
テレビたくさん観れたし。
大阪ではよく水間寺に行ってたのを思い出します。

その後東京に来てひとり暮らしをしてまた色んな正月を経験してきました。
近年は、韓国料理屋でK-1(魔娑斗選手の引退試合だった)を観た年、谷中を散歩してた年、インドで寝台列車に乗ってた年、仕事帰りに虎ノ門駅が無人だった年...など思い出しました。

今年は、この歳になってようやく正月の味わいが分かってきたような気がするけど、毎年そう思ってまた忘れてる可能性もあるな。

2015年もたくさん太鼓叩けたらいいなと思います。
ライブ初めは自分のバンドYalaqweです。
シーン横断的な活躍を続けるタップダンサーのレオナをゲストに迎えてお送りします。

このバンドは、年2回ぐらいのスローペースですが、ずっと「エキゾチシズムの再構築」というテーマでやってきました。
畏れられた未開・憧れられた異国・忘れられた混血。
ジャズとアフロリズムで裏からめくりかえしてみたいと思います。

1/9(金) 吉祥寺 Foxhole
Yalaqwe + レオナ:
 池宮ユンタ(per) 高井汐人(ts) 関根恒太朗(as) ヤマトヤスオ(wb) レオナ(tap)
19:00 open / 20:00 1st set / 21:10 2nd set
チャージ¥2000



宅録SoundCloud、たまにアップしてます。
https://soundcloud.com/ennecy/20150104-1a

2014年10月23日木曜日

N-S-C

わりとプライベートに作ってる音源をSoundCloudに載せていくことにしました。

https://soundcloud.com/ennecy

自分の好きな感じ、頭の中で鳴ってるリズムをたまに出したくなるので。
夜ひとり鍵盤に向かって録音してます。
まあ絵で言ったら落書きみたいなもんです。

いつの間にか、自分のリズムの感覚のルーツになってる音楽と日頃演奏してる音楽はほとんど接点なくなってんですよね...別にいいけど。